車から恐る恐る出てみると一人の男性が横たわっていた。
年のころは私と同じくらいだろうか・・薄汚れたジーンズに黒のダウンジャケット・・・
私は携帯を取り出し119番に電話をした。
「もしもし・・・・すい・ません・・・事故を・・起して・・・・・」
「まずは名前をお願いします。」
「・・・・・・」
「そちらの名前は?」
「・・・・・・」
私は怖くなって携帯を切った。
そして横たわっている男の両脇に腕を差しいれると、引きずるように後部座席へと押し入れた。
男は「・・グゥェッ・・・・・」とかすかな声をあげると静かになった・・・
どこをどう走ったかは覚えていないが家の前で車は止まっている。
ボォォォォ・・・・
かすかなエンジン音が静まり返った街に響いている。
ドォクゥ・ドォクゥ・ドォクゥ・・・・
突き破るように心臓の鼓動が私の体の中に満ち潮のように満ちてくる。
しばらく呆然と前を向いたままシートに座っていた。
ほんの少しの間だと思っていたが一時間ぐらいは経っている。
車の時計は1:00を示している。
ふと我に返って後ろを見る・・と、そこには男が座っていた。
頭からすこし血が流れ固まっている。
死んでいるのか!?・・・
私は男の顔に耳を近づけてみた。
かすかな息遣いが聞こえる、呼吸をしているようだ。
ほっ、と、安心すると急に恐怖に襲われた。
どうしよう・・・・
私は思い切って近くの総合病院に連れて行くことにした。
病院の救急入り口の受付に事情を説明して男を引き渡した。
しばらくして病院が連絡したのだろう、刑事が事情を聞きに来た。
私はパトカーに乗せられ、私の住む町の警察に連れて行かれた。
いろいろと状況を説明し、事情を聞かれ、説教をされた。
空が白み始め朝の太陽が顔を出そうとしているころ、私は解放された。
私のおじが、その警察に勤めていたので身元を保証してくれたのだった。
眠たい目をこすりながら
家路を急ぐ私は、寒さがいつも以上に身にしみた。
家に着くと私はすぐにベッドに転がった。すべてを忘れたかったから・・・・
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